あんずのブログ– category –
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第8話 生蓮根
生蓮根サラダと紫の顔色 18時を少し過ぎた《喫茶つむぎ》。窓の外はすっかり暗くなり、冷たい夜風に街灯の光が揺れていた。私はカウンターでホットココアを温めながら、ふっと息をついた。 「ホットココアをお願いします」声をかけてきたのは、仕事帰りら... -
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第7話 生姜湯
生姜湯と凍えた言葉 夕暮れの《喫茶つむぎ》。外の風は冷たく、扉の隙間から入り込むたびに店内の空気をひやりと揺らした。「寒いなぁ……体の芯まで冷えそう」私は土鍋の火加減を見ながらつぶやいた。 湯気とともに立ちのぼる生姜の香りが、鼻を抜けてじん... -
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第6話 白きくらげ
白きくらげと雨の面影 昼過ぎの《喫茶つむぎ》。窓の外ではしとしとと雨が降り続き、ガラス一面に細い水の筋が走っていた。私はカウンターの布巾をしぼり、鍋でゆらゆらと透きとおる白きくらげを煮ていた。ココナッツミルクと合わせれば、潤いの甘いデザー... -
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第5話 金針菜
金針菜と母の休息 昼前の《喫茶つむぎ》。窓から差し込む光は白く強く、外に出たら一瞬で夏バテしてしまいそうな日差しだった。私はカウンターに水差しを置き、額の汗をぬぐった。「今日も暑いなぁ……」冷たいおしぼりを準備しながら、ふと扉のベルが鳴った... -
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第4話 小豆
小豆粥と消えた紙片 昼下がりの《喫茶つむぎ》。外は雨がしとしとと降り続き、湿気が店の中までじんわりと入り込んでいた。 私は厨房で小豆を煮ていた。ふっくらとした粒が踊り、湯気と一緒に甘い香りが立ちのぼる。「小豆って、見てるだけでも元気が出そ... -
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第3話 枸杞の実
枸杞の赤い涙 午後の《喫茶つむぎ》。窓際の席に、スーツ姿のサラリーマンが座っていた。目の周りに手を当て、時折小さくため息をついている。 「お疲れのようですね」私は声をかけ、メニューをそっと開いた。「今日のおすすめは、パンナコッタのクコの実... -
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第2話 棗のハチミツ煮
消えた棗の秘密 《喫茶つむぎ》には、少し不思議な雰囲気がある。木の棚やアンティークのランプに混じって、場違いなようでいて妙に似合う大きな等身大の鏡。 あれはオーナーの蓮が「おしゃれなオブジェ」として置いたものだ。気まぐれで場所を動かすから... -
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第1話 杏仁豆腐
苦い杏仁の真実 ここ《喫茶つむぎ》は、駅から少し離れた路地にある小さな喫茶店。扉を開けると、木の温もりとやわらかな薬膳茶の香りが迎えてくれる。 私はそこで働く、薬膳師見習いのあんず。薬膳の知識はまだまだ勉強中だけど、「体も心もほぐれる一皿... -
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薬膳師あんずの小さな事件簿
街角にひっそりと佇む《喫茶つむぎ》。そこでは今日も、薬膳師の見習い・あんずが体にやさしい料理やお茶を用意している。 常連の会社員、疲れた学生、恋に揺れる若者――。彼らの抱える小さな悩みや、ふとした謎。その背後には、日常に隠れた「心と体のゆが... -
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エピソードゼロ 第4話「店長、おソバばっかじゃ夏バテしますよ!」
登場人物 あんず(19歳)一人暮らしの大学生。バイトと課題に追われつつ、ゆるく薬膳にハマり中。店長(40代)あんずのバイト先の店長。無愛想だけど部下思い。最近夏バテ気味。浅く疲れぎみ。 バイト先 町のカフェ 最近、バイト先の店長がちょっと元気な...