あんずのブログ– category –
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第36話 菊花茶
菊花茶と止まらない思考 朝の《喫茶つむぎ》は、まだ冬の名残りを引きずった冷たい風が窓を叩いていた。湯気の上がるポットの前で、私はレシピ帳をめくりながら首をかしげる。 ——巡らせる。——温める。——香りで整える。 どれも“良いこと”に見える。でも、良... -
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第35話 白木耳2
白木耳と静かに戻る声 夜の《喫茶つむぎ》は、雨の音がBGMのように静かに流れていた。常連客が帰り、私は片づけをしながら、白木耳(しろきくらげ)を水につけて戻していた。 ふと耳に届いたのは、いつもと違う音。 ——歌声。 蓮がカウンター奥で三弦ギター... -
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第34話 龍眼粥
龍眼粥と灯らない夜 夜の《喫茶つむぎ》は、いつもより少し暗かった。脚立の上で、オーナーの蓮がぶら下がった丸い電球を指先でつついている。 「……寿命だな。はい、交換。」 カチリ、と新しい電球を回し込むと、ふわりと温かな光が戻った。そのタイミング... -
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第33話 金柑シロップ
金柑シロップとミキサーのノイズ 午前中の《喫茶つむぎ》。曇りガラス越しの光が、カウンターをやわらかく照らしていた。私はレシピ帳を開き、昨日の続きに目を落とす。 《金柑——開鬱・化痰・寛胸》 走り書きのような文字が残されている。「開鬱……気をほど... -
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第32話 ローズティー
ローズティーと風の調べ 春の嵐が去った翌朝、《喫茶つむぎ》のガラス戸はうすく曇っていた。昨夜の雨が街の色を洗い流し、空気はどこか軽い。けれど、軽さの分だけ落ち着かない——そんな朝もある。 開店準備をしながら、私はレシピ帳の“香りの章”を開いた... -
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第31話 八角2
八角と失敗の香り 朝の《喫茶つむぎ》は、まだ開店前の静けさに包まれていた。窓の外では、雪解けの水が屋根の端を伝って、ぽたり、ぽたりと落ちている。春の気配が漂い始めたとはいえ、風はまだ少し冷たい。 昨夜、つむぎさんが笑いながら話してくれた言... -
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第30話 八角
古い手紙と香りの記憶 昼過ぎの《喫茶つむぎ》。ストーブの火がやさしく揺れ、カウンターにはコーヒーと焼き菓子の香りが漂っていた。ランチの片づけを終え、静かな午後。あんずは帳簿をまとめながら、差し込む陽だまりの中で小さく伸びをした。 そのとき... -
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第29話 干し柿
干し柿と焦がれた香り 冬の午後、《喫茶つむぎ》の窓から、やわらかな光が射していた。あんずはカウンターで干し柿を刻みながら、粉を吹いた果肉をそっと指でなぞった。やわらかな甘みが、冬の空気に溶けていく。 ベルが鳴る。「こんにちは」現れたのは、... -
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第28話 紅花茶
紅花茶とつむぎの過去 冬の朝、《喫茶つむぎ》の扉の前に、一通の封筒が置かれていた。古びた便箋に、手書きの文字で「つむぎさんへ」とある。 差出人の名を見て、つむぎさんの指先が止まった。「……八重さん」 その名を聞いたあんずは首を傾げる。「どなた... -
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第27話 参鶏湯風スープ
参鶏湯風スープと年末の温もり 夕暮れの《喫茶つむぎ》。ガラス越しの通りには、買い物袋を下げた人々が足早に行き交っていた。年末特有のざわめきと、黒豆を煮るやさしい甘い香りが店内を包んでいる。 「……寒い~!」ベビーカーを押して入ってきたのは沙...