あんず– Author –
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あんずのブログ
第30話 八角
古い手紙と香りの記憶 昼過ぎの《喫茶つむぎ》。ストーブの火がやさしく揺れ、カウンターにはコーヒーと焼き菓子の香りが漂っていた。ランチの片づけを終え、静かな午後。あんずは帳簿をまとめながら、差し込む陽だまりの中で小さく伸びをした。 そのとき... -
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第29話 干し柿
干し柿と焦がれた香り 冬の午後、《喫茶つむぎ》の窓から、やわらかな光が射していた。あんずはカウンターで干し柿を刻みながら、粉を吹いた果肉をそっと指でなぞった。やわらかな甘みが、冬の空気に溶けていく。 ベルが鳴る。「こんにちは」現れたのは、... -
五行クロニクル
第15話 五臓クロニクル、未来へのレシピ
朝のアラームが鳴る前、柚葉はすでに目を覚ましていた。 すっきり、とは言わない。でも――いつものような「私、布団と契約してた? 外界と縁切れてる?」みたいな感覚ではなかった。 まぶたを開けると、ほんの少し軽さがある。 「……お? 起きれる……かも。... -
五行クロニクル
第14話 すれ違う気のコンチェルト(自律神経編)
朝のアラームが鳴って、柚葉は布団から片手だけ出し、スマホを止めた。目は1ミリも開いていない。脳みそはまだ夢の国に滞在中。 「……あと5分……いや……永遠……」 布団の中は天国。外界は地獄。体は動かないのに、胸だけがソワソワして妙に落ち着かない。 (寝... -
五行クロニクル
第13話 記憶のラビリンスに迷い込む(集中力低下編)
朝、柚葉はノートの同じ段落を三回目から先に進めず、鉛筆を口にくわえたまま固まっていた。「……この一文、さっきも読んだ、てか昨日も読んだ。なんで入ってこないんだ私の脳……」 視界の端が霞んで、活字が白い霧に溶けていく感覚。コーヒーは空、胃はぐう... -
五行クロニクル
第12話 夢と現実のクロスロード(舌診編)
――気虚タイプの私って、舌までお疲れモード? 朝の光がカーテンのすき間から差し込む。柚葉は、カラのマグカップを片手に、洗面台の前でぼんやり立っていた。「うーん、なんか口の中が重たい……昨日、夜中のポテチ+カフェオレのコンボが効いてるな」 顔を... -
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第28話 紅花茶
紅花茶とつむぎの過去 冬の朝、《喫茶つむぎ》の扉の前に、一通の封筒が置かれていた。古びた便箋に、手書きの文字で「つむぎさんへ」とある。 差出人の名を見て、つむぎさんの指先が止まった。「……八重さん」 その名を聞いたあんずは首を傾げる。「どなた... -
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第27話 参鶏湯風スープ
参鶏湯風スープと年末の温もり 夕暮れの《喫茶つむぎ》。ガラス越しの通りには、買い物袋を下げた人々が足早に行き交っていた。年末特有のざわめきと、黒豆を煮るやさしい甘い香りが店内を包んでいる。 「……寒い~!」ベビーカーを押して入ってきたのは沙... -
五行クロニクル
第11話 涙のリフレクションは心の泉で(心労編)
夜のアラームが鳴っても、柚葉はベッドの上で動けなかった。レポートを提出して、課題も全部終わったはずなのに、心が空っぽだ。スマホを開けば、友達の楽しそうな投稿が次々と流れてくる。旅行、恋人、推しライブ、カフェ巡り。どれもキラキラしていて、... -
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第26話 黒酢ドリンク
黒酢ドリンクと紛れた瓶の謎 昼下がりの《喫茶つむぎ》。ストーブの火がやさしく揺れ、外には春を告げるような風が吹いていた。カウンターでは、あんずが仕込みの手を止めて伸びをしたところだった。 勢いよくドアが開く。「すみませぇん! 酸っぱいもの...