梨と声のひらめき
夜の《喫茶つむぎ》。
窓の外には街灯が淡く灯り、通りを行き交う人々の足音がリズムのように響いていた。
カウンターの奥では、蓮が3弦ギターを抱えて静かにジャズを奏でている。深い音色が店内を柔らかく包み込んでいた。
ベルが軽やかに鳴り、森永翠さんが入ってきた。
「こんばんは」
彼女はカウンターに腰を掛け、「紅茶と……今日はご褒美にモンブランを食べようと決めてきたんです」と小さく笑った。
けれど、その声はかすれていて、疲労が滲んでいるのがすぐに伝わった。
その瞬間、蓮のギターが一拍遅れて止まった。
彼は穏やかな目で翠さんを見やり、何事もなかったかのように演奏を再開する。
私は少し考え、喉をいたわる食材の話を切り出した。
「喉の乾きやかすれには、体に潤いを補う食材が助けになります。
梨は体をうるおし、声をやさしく守ってくれます。蜂蜜は粘膜を保護して炎症をやわらげます。
さらに白きくらげは肺を潤し、美肌にも良いとされていますし、百合根は心を落ち着けて不眠や咳にも役立ちます」
翠さんは興味深そうに耳を傾け、やがて壁に貼られた小さなメニュー表に目を留めた。
「……あ、ここに『梨のコンポートデザート』って書いてありますね」
「はい、今おすすめなんです。お仕事で声をたくさん使う方には特にぴったりですよ」
翠さんは少し迷ったようにモンブランを見やったが、やがて小さく肩をすくめた。
「……やっぱり今日は、梨にします。ご褒美のつもりが、もっと体をいたわるご褒美になりそうです」
やがて運ばれてきた梨のコンポートは、淡い透明感のあるシロップに包まれ、見ているだけでも涼やかだった。
ひと口頬張ると、翠さんの表情がほどけていく。
「……喉にすっと染みていく感じ。声だけじゃなく、気持ちまで潤っていくみたい」
彼女はふとひらめいたように顔を上げた。
「次の広報企画、“食と健康”をテーマに考えているんです。声のケアを切り口にした商品PR、面白いかもしれません」
力強いまなざしであんずを見つめる。
「今日の体験をそのまま活かせそうです。もし提案することになったら、《喫茶つむぎ》にも協力をお願いしても良いですか?」
蓮は演奏を続けながら、低く落ち着いた声で言った。
「店長のつむぎが戻ったら伝えておくよ。……まあ、声のご縁をつなぐ場になるのも悪くないだろう」
翠さんは驚いたように目を瞬かせ、それから安心したように微笑んだ。
梨の爽やかな甘みと紅茶の香りの中で、彼女の声はかすかに、けれど確かに明るさを取り戻していた。
今日の薬膳ミニ知識
梨:体を潤し、喉のかすれや渇きをやわらげる。
蜂蜜:粘膜を守り、炎症を和らげる。
白きくらげ:肺を潤し、美肌にも効果。
百合根:心を落ち着け、不眠や咳の改善に役立つ。
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