
登場人物
あんず(19歳)
一人暮らしの大学生。バイトと課題に追われつつ、ゆるく薬膳にハマり中。
父(50代)
営業職。無口で不器用。「疲れた」が口癖。
目次
実家に帰った日
「ただいま〜……」
実家の玄関を開けると、静かすぎる空気が迎えてきた。
アルバイトのシフトが飛んだ週末、あんずは洗濯物と冷蔵庫のストックが尽きたため、食材をもらいに実家へ帰ることにしたのだった。
「あれ、父さん、今日休み?」
リビングのソファには、昼間からぐったりしている父。
「あんずか。疲れてて…今日は在宅」
…え、顔色やばくない?
クマ、青白い顔、反応も鈍い。
「ちょっと、動けてないじゃん…」
あんずは思い出した。祖母のノートの一文。
「気が足りないと、動けなくなる。脾を整えよ。」
キッチンにあったのは、ごはん、にんじん、山芋、冷蔵庫に半端なサラダチキン。
「よし、10分で元気チャージごはん作るぞ」
気力を養う山芋とにんじんの鶏肉粥

〈材料(1人分)〉
- ごはん…お茶碗1杯
- にんじん(細切り)…1/4本
- 山芋(小さくカット)…50g
- サラダチキン(ほぐす)…1/2個
- 水…300ml
- 白だし…大さじ1
- ごま油(お好みで)…少々
〈作り方〉
- 鍋に水・白だし・にんじんを入れて火にかける
- にんじんが柔らかくなったら、ごはん・山芋・サラダチキンを加える
- ひと煮立ちしたら火を止め、お好みでごま油をたらす
薬膳ポイント
山芋(補気・健脾):胃腸の働きを助け、気を養う
にんじん(補気・養血):疲労回復や肌の潤いに◎
鶏肉(補気):体力を底から支える
ごま油(潤い):香りで食欲アップ、腸にもやさしい
父食す
「…なんだこれ、うまいな」
無口な父がぽそっとつぶやく。
「元気出たら、また明日も戦えるでしょ?」
あんずはふふんと鼻で笑った。
翌朝。冷蔵庫に、ごはんとにんじん、ラップで包まれた山芋の塊が追加されていた。
あんずのひとこと
「ごはんひとつで、ちょっとだけ“明日”が楽になる気がした。」