第2話「父さん、疲れ顔だよ」

登場人物

あんず(19歳)
一人暮らしの大学生。バイトと課題に追われつつ、ゆるく薬膳にハマり中。
父(50代)
営業職。無口で不器用。「疲れた」が口癖。

目次

実家に帰った日

「ただいま〜……」

実家の玄関を開けると、静かすぎる空気が迎えてきた。

アルバイトのシフトが飛んだ週末、あんずは洗濯物と冷蔵庫のストックが尽きたため、食材をもらいに実家へ帰ることにしたのだった。

「あれ、父さん、今日休み?」

リビングのソファには、昼間からぐったりしている父。

「あんずか。疲れてて…今日は在宅」

…え、顔色やばくない?

クマ、青白い顔、反応も鈍い。

「ちょっと、動けてないじゃん…」

あんずは思い出した。祖母のノートの一文。

「気が足りないと、動けなくなる。脾を整えよ。」

キッチンにあったのは、ごはん、にんじん、山芋、冷蔵庫に半端なサラダチキン。

「よし、10分で元気チャージごはん作るぞ」


気力を養う山芋とにんじんの鶏肉粥

〈材料(1人分)〉

  • ごはん…お茶碗1杯
  • にんじん(細切り)…1/4本
  • 山芋(小さくカット)…50g
  • サラダチキン(ほぐす)…1/2個
  • 水…300ml
  • 白だし…大さじ1
  • ごま油(お好みで)…少々

〈作り方〉

  1. 鍋に水・白だし・にんじんを入れて火にかける
  2. にんじんが柔らかくなったら、ごはん・山芋・サラダチキンを加える
  3. ひと煮立ちしたら火を止め、お好みでごま油をたらす

薬膳ポイント
山芋(補気・健脾):胃腸の働きを助け、気を養う
にんじん(補気・養血):疲労回復や肌の潤いに◎
鶏肉(補気):体力を底から支える
ごま油(潤い):香りで食欲アップ、腸にもやさしい


父食す

「…なんだこれ、うまいな」

無口な父がぽそっとつぶやく。

「元気出たら、また明日も戦えるでしょ?」

あんずはふふんと鼻で笑った。

翌朝。冷蔵庫に、ごはんとにんじん、ラップで包まれた山芋の塊が追加されていた。


あんずのひとこと

「ごはんひとつで、ちょっとだけ“明日”が楽になる気がした。」

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この記事を書いた人

国際中医薬膳師のいろはが薬膳の効果と普段食べている食材にも効能があることをお伝えします。

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