第3話 枸杞の実

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枸杞の赤い涙

午後の《喫茶つむぎ》。
窓際の席に、スーツ姿のサラリーマンが座っていた。
目の周りに手を当て、時折小さくため息をついている。

「お疲れのようですね」
私は声をかけ、メニューをそっと開いた。
「今日のおすすめは、パンナコッタのクコの実ソース掛けです。クコの実は“赤い宝石”と呼ばれるほど体にいいんですよ。目の疲れにもぴったりです」

サラリーマンは興味深そうに顔を上げた。
「クコの実……赤いやつですよね? 見た目もきれいだし、頼んでみます」

やがて、白い器が運ばれてきた。
真っ白でなめらかなパンナコッタの上に、とろりと鮮やかな赤いソースがかかっている。
小さな果実が散らされ、光を受けて宝石のようにきらめいた。

彼はスプーンを手に取ったが、ふと力が抜けたのか、カランと音を立てて落としてしまった。
すくったばかりの赤い汁が跳ね、頬にしずくのように伝う。

「あっ……すみません!」
慌てる彼に、私はおしぼりを差し出した。
「大丈夫ですよ。……ほら、鏡を見てください」

窓ガラスに映る顔を見て、彼は苦笑する。
「……まるで赤い涙だな」

彼はぽつぽつと話しはじめた。
「仕事では失敗続きで……この間、彼女にもフラれて。何をやっても裏目に出るんです」

私は首を振った。
「でも、その赤いしずくは“涙”じゃありません。宝石なんです」
クコの実のソースを指さしながら言葉を続ける。
「クコの実は血を補い、体を元気づける果実。疲れた目や心を支えてくれるんですよ」

つむぎさんもやわらかく微笑む。
「それに、“クコ”の花言葉には『誠実』や『お互いに忘れよう』っていう意味もあるんです。過去を水に流して、新しく始める力をくれるんですよ」

サラリーマンは目を瞬かせ、そして静かにうなずいた。
「……忘れることも、前に進むことなんですね」

彼は器を両手で包み、ゆっくりとパンナコッタを口に運んだ。
「……甘酸っぱくて、なんだか胸にしみます」

外の光が赤いソースに反射して、小さな宝石のようにきらめいていた。

【今日の薬膳ミニ知識】

・クコの実(枸杞子):目の疲れをやわらげ、血を補い、体力回復を助ける。
・「赤い宝石」と呼ばれ、滋養強壮・アンチエイジングにも用いられる。
・花言葉は「誠実」「お互いに忘れよう」「過去を水に流す」。
・眼精疲労や心身の疲れを感じるときにぴったり。

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この記事を書いた人

国際中医薬膳師のいろはが薬膳の効果と普段食べている食材にも効能があることをお伝えします。

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