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第13話 かぼちゃ餡パイ
かぼちゃ餡パイと旅館の未来 秋の夕暮れ、街路樹の葉が色づき、窓から柔らかな光が差し込んでいた《喫茶つむぎ》。カウンターの奥では、私は焼き立てのお菓子を冷ましていた。パイの香ばしい匂いと、かぼちゃのほのかな甘みが店内に広がる。 ベルが鳴り、... -
第12話 ハチミツ大根
ハチミツ大根と掠れた声 夕方の《喫茶つむぎ》。窓の外は春めいてきた風が吹いていたが、まだ冷たい空気が残っている。私はカウンターで大根を刻み、蜂蜜に漬け込んだ瓶を棚に置いた。しばらく待てば、透きとおった甘い汁がにじみ出てくる――喉に優しいお手... -
第11話 緑豆スープ
緑豆スープと見失った鍵 昼下がりの《喫茶つむぎ》。外は晴れているのに、蒸し暑さが残り、じっとりとした空気が漂っていた。私は厨房で緑豆を煮込みながら、コトコトと立ちのぼる湯気を眺めていた。淡い緑色のスープは、火照った体を冷まし、夏の疲れをす... -
第10話 山査子飴
山査子飴と揺れる恋心 午後の《喫茶つむぎ》。外はまだ日差しが強いけれど、店内は木の温もりとやさしい影に包まれていた。カウンターには、小瓶に詰めた赤い飴玉を並べている。光を透かすと、まるで小さなルビーのように輝いた。 「今日のおすすめは山査... -
第9話 黒豆茶
黒豆茶と静かな余韻 夜の《喫茶つむぎ》。雨は止んでいたが、冷たい風が街を抜けていく。店内では温かな灯りがやわらかく揺れ、コーヒー豆と黒豆を炒る香ばしい匂いが漂っていた。 扉のベルが鳴り、入ってきたのは、先日ココアとレンコンサラダを食べて帰... -
第8話 生蓮根
生蓮根サラダと紫の顔色 18時を少し過ぎた《喫茶つむぎ》。窓の外はすっかり暗くなり、冷たい夜風に街灯の光が揺れていた。私はカウンターでホットココアを温めながら、ふっと息をついた。 「ホットココアをお願いします」声をかけてきたのは、仕事帰りら... -
第7話 生姜湯
生姜湯と凍えた言葉 夕暮れの《喫茶つむぎ》。外の風は冷たく、扉の隙間から入り込むたびに店内の空気をひやりと揺らした。「寒いなぁ……体の芯まで冷えそう」私は土鍋の火加減を見ながらつぶやいた。 湯気とともに立ちのぼる生姜の香りが、鼻を抜けてじん... -
第6話 白きくらげ
白きくらげと雨の面影 昼過ぎの《喫茶つむぎ》。窓の外ではしとしとと雨が降り続き、ガラス一面に細い水の筋が走っていた。私はカウンターの布巾をしぼり、鍋でゆらゆらと透きとおる白きくらげを煮ていた。ココナッツミルクと合わせれば、潤いの甘いデザー... -
第1話 胃痛バトルは深夜の図書館で(胃痛編)
大学の図書館の隅の席。誰もいない午後の静けさに、柚葉の小さなため息だけが響いていた。 「これで今日三本目……私の胃、完全にブラック企業だよね。残業代ゼロで24時間稼働中」 机の上には教科書とノート、その横にはコンビニで買ったコーヒーのペットボ... -
五行クロニクル
ストレスで胃がデスマッチ!? 大学生の体内は、今日も残業バトル中! 大学生・柚葉は一人暮らしの天然女子。課題とバイトに追われ、不規則な生活でしょっちゅう体調を崩している。 ある日、胃痛に襲われた彼女は――なぜか自分の体内に入り込んでしまう。そ...